10月14日は鉄道の日だそうだ.今や鉄道ファンも年齢層の幅を拡げ,各地でも様々な行事が予定されているようだ.そのためかどうか不明だが,先日NHKラジオ深夜便で電車路線のライブ録音を放送していた.初日の放送が京都の‘叡山電車’出町柳駅~鞍馬駅間で,学生の頃にも馴染があったが講師を務めた大学での授業に出町柳~茶山間を5年間乗車していたこともあり懐かしく思って聴いてみた.当然画像などはなく音だけである.それでもアナウンサーの語りと臨場感あふれる音の構成でその車内と沿線の雰囲気が十二分に伝わってくるのに感心した.
毎水曜日の日経新聞夕刊にフォトジャーナリスト櫻井寛氏の‘にっぽん途中下車’という現地取材記事が掲載されている.たまに読む程度なのだが,6月に阪急電車の梅田~十三間の3複線についての記事が載った.私は40年ほど前10年ほどの間阪急電鉄の梅田駅移転跡地計画に関わっていた経緯があり,興味もあって読んでみた.
「ポッポッポ、ピー!」。ここは大阪キタの巨大ターミナル、阪急電鉄の梅田駅。京都本線、宝塚本線、神戸本線、3本の阪急電車が時報と同時にきびすを接し発車して行く。阪急名物の3複線同時発車だ。
いつ見ても阪急はすごいと思う。1号線から9号線まで、ずらり9本並んだ梅田駅のプラットホームはまさに私鉄王国の象徴だ。関西の人はもう 慣れっこだろうが、私のように関東から来ると、私鉄の王者は阪急だとつくづく思う。なぜなら複々線までは他の私鉄にもあるが、3複線は阪急の梅田~十三間 が全国でも珍しい。給与も高水準とされ、まさに羨望の阪急電鉄なのである。
(2014.6.18 日経新聞夕刊より抜粋)
阪急梅田プロジェクトを進めていた当時の打合せ相手は,今は故人となられたが,我々設計者・施工者にとって相当に手強い人であった.その方は梅田駅移転計画の当初から関わってこられたのだが,鉄道マンにとって悲願のようなものだったのか,この3複線の完成した日のこと3本の始発電車が同時に発車する姿を感慨深げに話されたことをよく覚えている.当時はそんなにスゴイこととも思わずに聞いていたが.何せ新駅の着想から用地の買収・企画・設計・工事と20年近くを掛けたビッグプロジェクトである.悲喜こもごも数え切れないほどの逸話が私の記憶の内にある.
関西私鉄の雄といえば近鉄をあげる人が多かろう.路線延長,路線エリアともに日本一を誇るからだが,阪急と同じように大阪市内から奈良線・大阪線・南大阪線という大きく分けて3つの路線網を持つが,ターミナルが上本町駅と阿部野橋駅とに分れているため3複線はない.まして奈良線は40年ほど前に上本町から難波に延伸し,さらに近年阪神電車と相互乗入れをして三宮まで走っているから中間駅になってしまった.
JR各社であれば3複線くらいざらにありそうだが,大規模な駅のほとんどは中間駅・通過駅だから終着駅にはないように思える.ということで3列車同時発車は阪急電車にしかないのかもしれない.
‘王者’ 阪急は十三を出ると,3つの路線は東・西・北方向に離れていって解りよい.例外は京都線から分れる千里線と宝塚と西宮を結ぶ今津線だが..対して ‘雄’ 近鉄は最近開通した‘けいはんな線+市営地下鉄’を含めれば4線が大阪市内から概ね東方向河内平野から奈良盆地に向う.そのためそれぞれの路線が近接したり,また例えば生駒線,田原本線,京都線・橿原線のように3つの本線を横糸のように(実際には南北に)結ぶ線が絡み,そこにJR線が重なるから大阪~奈良~京都にかけての路線網は複雑で解りにくい.初めての人は検索サイトの案内に頼るしかあるまい.
近鉄京都線~橿原線~吉野線は連続しての乗車はできないが,平安京・平城京・藤原京・飛鳥京・吉野宮と我国のかつて置かれた宮を縫い巡る歴史の宝庫のような路線ともいえる.京都から吉野まで普通電車を乗継いでの1日旅もまた一興かと...時間が許せば,京都駅からはJR奈良線・万葉まほろば線を乗継いで桜井駅か畝傍駅辺りで近鉄大阪線・橿原線に乗換えて飛鳥方面へと向うのがよい.大和王権ゆかりの地や古墳群を巡ることにもなり,さらなる興趣を添えようから.
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以前この拙文を書いた折りに,3複線を並んで走る列車の写真を載せたかったのだが,新聞写真をそっくり頂戴するわけにもゆかぬのでそのままになっていた.私は鉄道マニアではないし,ましていわゆる撮り鉄でもないが,最近ふと思いついて箕面からの仕事帰りに中津で電車を降りて撮影ポイントを探して歩いてみた.阪急電車は梅田駅から淀川の鉄橋を越えるまでずっと高架線だから,いわゆる‘ギョーカイ人’でない者にとって撮影できる場所は限られる.十三に向う国道176号線が高架になり,線路と同じ高さで並行している中津付近が最適と思われた.その日は準備不足なうえ疲れもあってうまく撮れず,別の日に再チャレンジした.
梅田駅を出発する特急・急行列車の時刻は3線共10分間隔で揃えてある.シャッターチャンスは10分に1回あることになるが,1時間ほど粘ってみた結果は散々であった.3本の列車が綺麗に横一線で走ってくることがなかったのだ.概ね一番手前の神戸線が先行してきて,宝塚線・京都線はその陰に入ってしまうのである.反対側からならうまく撮れたろう.
では,ここに掲載した写真はどうやって撮影したのか? マニアの方なら気づかれよう,この写真には‘ウソ’がある.
手前2列車は梅田駅をスタートした神戸線・宝塚線の下り電車で間違いないが,一番奥の京都線の列車は,実は梅田駅に向っている上り電車の後ろ姿なのだ. |